AS日本代表のエース Solo乾友紀子選手 世界水泳本番直前!! Free Routineを徹底解説!

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乾友紀子選手のフリールーティーンのテーマ

タイトル:「大蛇~オロチ~」

振付け:舘形比呂一/井村雅代

作曲:松本俊行

乾友紀子選手のフリールーティーンのあらすじ(日本語)

美しく妖艶に舞う女性の姿が月明かりの中に浮かび上がってくる・・・。

実はその正体は女人に化けた「オロチ」。オロチとは日本の神話に出てくる八つの頭を持つ大蛇。その女性の舞は美しくなめらかで、そして情熱的である。

やがてオロチが本性を現し大蛇と化す。水をうねらせ、空をうならせ、大自然の怒りを一身に背負ったような激しい動きの中、神(スサノオノミコト)に退治され息尽きてしまいます。

蛇の化身としてのなめらかで妖艶な動きから、やがて凶暴に荒々しくなってゆく様を、繊細かつ大胆な泳ぎで演じます。日本人ならではの繊細さと迫力ある動きが共存する世界です。

乾友紀子選手のフリールーティーンのあらすじ(英語)

Title:「OROCHI ~ The Legendary Giant Snake with eight heads ~」

<Description>

There is a woman who is beautiful, voluptuous, and dances under the moonlight. In fact, a woman’s true identity is an eight-forked head and an eight-forked tail giant serpent from Japanese mythology.

Her dance flows beautifully, smoothly and passionately.

Eventually, she reveals her true identity as a large giant serpent OROCHI.

Susanoo, a son of the god of Amaterasu, decided to slay OROCHI because OROCHI makes disturbed society and people. Susanoo started to attack OROCHI and made him angry.

OROCHI made swirling in the sea, roaming and lighting in the sky, and the ground shook.

OROCHI struggles to fight against Susanoo, even using the power of Nature. However, runs out of breath at the end.

Yukiko will express the smooth, bewitching movement of a large giant serpent of movements gradually changing to a wild barbaric moment by delicacy and power of audacious swim.

Japanese is good at showing a specific world of coexistence with delicacy and powerful movement.

乾友紀子選手のフリールーティーンの解説

上の図は、乾友紀子選手の演技をマップ化したものです。

まず、試合に使用しているプールは、50m×25メートルのプールで、競泳の試合では10コースのプールになります。そのプールを30mのところまでを競技エリアとし、Artistic Swimmingでは使用しています。プールサイドの両側に、EXC審判(5名)とAI審判(5名)がちりばめられて採点を行っています。審判が座る審判台はwalk-on deckから10mのラインぐらいから設置されていることが多いです。審判に加えTechnical controller(Soloでは3名)が技を正確に申告通り行うことができているかをチェックしています。Technical controllerの席の横には、審議になった際に利用するビデオモニターが設置されています。

紺色の実線矢印の部分はTransitionと言って、HYBRIDとHYBRIDのつなぎの部分であったり泳いで移動している部分のことを言います。このTransitionの部分は、AI(Artistic Impression)の審判員が芸術性部分を主観的に評価しています。音楽との同調性や身体の使い方のパターン・バリエーション、振付けや表現力などを項目ごとに採点しています。

各色の点線矢印と青・水色の星マークの部分はHYBRIDと言って、脚技の組み合わせ(連続)の構成を行っている部分です。SOLOのFree Routineでは7つ行うことがルールになっています。それぞれHYBRIDの難易度が評価され、点数がつきます。また、このHYBRIDに関しては、演技前に申請が必要で、演技中はTechnical controllerが申請通りに行っているのかどうかの認定をしています。不認定になると難易度はなくなり、そのHYBRIDの点数はほぼ0点ということになってしまいます。

乾友紀子選手本人のコメントによるフリールーティーンの解説

ここからは、競技者である乾友紀子選手にインタビューしてどこよりも詳しいFree Routineの解説をお伝えしていこうと思います。

普段の練習をしている時や、実際の試合本番の時などは何を考えながら泳いでいるのか?泳いでいる時は何をイメージして、どういう気持ちで表現しているのか? 2分18秒の演技の中でどこに注目して演技を見てほしいのか?など本人にしかわからない部分を深掘りしていきます。

乾友紀子選手のフリールーティーンの陸上動作編

「このOROCHIをテーマにしたFree Routineの陸上動作は、本当に私のお気に入りなんです。なぜなら、とっても感情をこめやすいからです。」

「特に、感情をのせやすいのは右へ左へ手(腕)を伸ばす振付けのところです。そこでは、蛇の片鱗(あくまでも片鱗だけ)を見せるということを、イメージしてやっているんです。」

綺麗で妖艶な女性が舞っているところから始まる陸上動作ですが、一方で女性の本性は蛇であったというストーリーをイメージさせるという構成になっています。

乾友紀子選手の演じる「大蛇~オロチ~」の世界観に引き込まれてください。

乾友紀子選手のフリールーティーンの飛び込み~HYBRID-1・2編

「Free Routineの飛び込みは、横向きに飛び込んでいるのですが、実はこれは私の案なんです。」と本人が教えてくれました。

また、水面にあたった際の衝撃はなかなか大きいようで、“ビンタ”をされたような衝撃が着水の時にはあるようです。

着水の際に水上に残った手に注目していて下さい。そのまま、水中に身体が消えることなく優雅にそして妖艶に蛇が水中を泳いでいる様子を表現しています。

そして、そのまま水中に潜り、2つのHYBRIDを行います。HYBRID-1とHYBRID-2の間に息継ぎはしますが、合計で約36秒間連続で脚技を行っています。

この間に約20mの地点まで移動もしているんです。この1lap目の見どころは、技を行うスピード感と20m進んでいるときの移動の速さが見どころになるかと思います。

乾友紀子選手のフリールーティーンのHYBRID-3~HYBRID-5編

序盤の脚技の連続が終わった後、少しの時間手や上半身の動作を使って表現しながらプールを泳いでいきます。ここでは徐々に蛇の本来の姿(大蛇~オロチ)が見え始めるところを演じています。徐々に荒々しくなり迫ってくるような迫力のある演技に引き込まれること間違いないと思います。

そして、そのままHYBRID-3の脚技の連続に入ります。乾友紀子選手曰く、ここのHYBRIDが実はこのRoutineのなかで一番難しい構成だそうなんです。

なぜかというと脚を開いたり身体を反らせたりなど、さまざまな種類の技が盛りだくさんはいっているからなんだそうです。この部分の脚技をやっている時は、腕に乳酸が溜まりパンパンになっている状況です。ひどい時には手のひらや指の間の筋肉がカチカチになり、感覚がなくなってしまうほどです。

そして、先ほどの荒々しい場面から曲調が今度は穏やかなものに変化していきます。一旦HYBRID-4ではオロチは穏やかに落ち着きを見せるのですが、そう言っていられるもの束の間でさらに曲調が変化します。再びオロチは豹変を見せ、激しい気性に荒々しさを増していきます。

その様子をHYBRID-5の部分で荒々しさを小刻みな脚技の動きで表現しています。

HYBRID-5の後、10秒弱泳いでプールを移動するところがあります。ここの特徴的な動きはバタフライをベースに、オロチが海の中で渦を巻き、彷徨い、空を照らす。自然の力を使ってまでスサノオと闘おうと奮闘する。というストーリーを演じています。

乾友紀子選手曰く、この部分は“心臓破りの坂”と心の中で思っているらしく、必死で泳いでいても心臓がバクバク打っているのを感じるぐらい心拍数がすごく上がっているんだそうです。

乾友紀子選手のフリールーティーンのHYBRID-6~HYBRID-7編

演技のラストの部分、HYBRID-6とHYBRID-7はたったの一呼吸(一息吸うだけで)でつながっています。ここでは、スサノオノミコトとオロチが激しく戦って場面を表現していいるそうで、もちろん演技のラストなので「私は意識が飛びそうなぐらい息苦しくしんどいのですが、見ている人が息苦しくなるようなぐらいの脚技の連続を「これでもか!」というほどの構成をくみ上げています。」と教えてくれました。

続けて、乾友紀子選手は「本当にそう感じてくれれば、本望です。」と話してくれていました。激しい戦いの描写を脚技の連続で表現した後、声楽家の川越塔子さんの声とともに、死に悶え、苦しみ、発狂しているオロチの情景を片脚の動きで表現し、オロチは息絶えてしまします。

乾友紀子選手のフリールーティーンのまとめ編

Free Routineの「大蛇~オロチ~」は2022年の世界水泳選手権@Budapestから泳いでいる演目です。

このRoutineで日本人初のSoloでの金メダルを獲得し、世界チャンピオンになれました。

その時からルール(2023年シーズンから新ルールになった)が変わり、構成が全く違うので、曲は同じでテーマも同じだけど、新しいRoutineを泳いでいるという気持ちで私はやっています。

どのあたりが実際に変わったのか、違いを是非探してみて下さい。

去年から大切に作ってきた作品なので、脚技が多くなってもオロチの世界観を最後まで出し切って泳げるようにしたいです。

観客席から、テレビの前からたくさんの応援をよろしくお願いいたします。

以下、世界水泳選手権2022(Budapest)、World Cup 2023 #1(Canada:3月)・#2(France:5月)・#4(Spain:6月)で演技したFree Routineの動画です。

演技構成の変化が追えると思います。良ければご覧ください。

世界水泳選手権2022@Budapest(2022.6月)

#1 CANADA Markham大会(2023.3月)

#2 FRANCE Montpellier大会(2023.5月)

#4 SPAIN Oviedo大会(2023.6月)

AS日本代表のエース Solo乾友紀子選手 世界水泳本番直前!! Free Routineを徹底解説!のまとめ

世界水泳選手権 アーティスティックスイミング競技 SOLO種目日本代表 乾 友紀子選手のFreeルーティーンの演技内容についてどこよりも詳しくお伝えしてきました。

2023年7月14日から福岡で開催される世界選手権では、昨年の世界選手権で金メダルを取った演目「大蛇~オロチ~」を新ルールにのっとって大幅にバージョンアップさせた構成になっています。2022年6月、Budapestの地で世界中を圧巻・魅了させた、乾選手の代名詞と言っても過言ではないこのルーティーンで「2連覇+2冠」を目標に出場します!

迫力と妖艶さ、そして世界一の技術(スキル)が織りなす、数々の脚技の連続を楽しみにしていてください!!

乾友紀子選手の出場予定は、

7月14日9:00~Solo Technical Routine予選→7月15日19:30~Solo Technical Routine決勝

7月17日9:00~Solo Free Routine予選→7月19日19:30~Solo Free Routine決勝

となっています!

是非、テレビ放送は「テレビ朝日系」で放送されますので、近くなりましたら番組表をご確認の上、ご覧いただけますと嬉しいです!

応援、よろしくお願いいたします。

今回の記事も最後までお読みいただきありがとうございました。

次回の記事も楽しみにしていただけると幸いです。

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