子供のバランス能力というものは、発育発達段階に応じて構築されていくものであると思います。よく聞く、「ゴールデンエイジ」や「プレゴールデンエイジ」という言葉は、この発育発達の時期に当てはめて後発的に言われるようになった言葉です。
そのもととなる成長の過程はどのように表されているかというと、代表的なものに「スキャモンの発達曲線」という研究報告が用いられています。
今回の記事では、発育発達・成長の過程と絡めて、バランス能力について記事を綴っていこうと思います。
子供のバランス能力とスキャモンの発達曲線
スキャモンの発達曲線というものをご存じですか?
スキャモンの発達曲線で示しているものは、成長発育を20歳でのレベルを100%として考え、各体の組織の発達・発育していく特徴を4つのパターンに分けてグラフ化したものです。
まず、この「スキャモンの発育曲線」について正しく理解することが重要です。
正しく理解?なにを?となりますが、このスキャモンの発育曲線が一体どうやって誕生し、そしてこれが何を表したグラフであるか?ということです。
スキャモンとは、人の名前であり、スキャモンさん(医師:解剖医)が身体の各組織を解剖し、その組織の重量を図り計測したものです。要するに、人間を構成する組織が年齢の経過(時間経過)とともにどのように変化しているのかを「量」的に見ているということです。
子供のバランス能力とゴールデンエイジ
自分が思ったように体を動かせるようになり、さまざまな動作や技術をすぐに覚え身につけられる(即座の学習と言われています)ことから「ゴールデンエイジ」と呼ばれています。
背景には、前述したスキャモンの発達曲線に基づいて、9~12歳ごろに神経系の発達がほぼ100%になるため、動きの習得に最も適した時期と考えられているということがあります。
しかし、前述したように、スキャモンの発達曲線は身体各所の発達具合を重さ「量」で計測したものであるので、この時期に100%になるのであれば、子供の運動能力は万人とも同じになると思いませんか?これが、落とし穴です。運動能力は「質」で判断しないといけません。
このスキャモンの発達曲線とゴールデンエイジとの関係性をうまく理解する必要があります。要するに、組織構造的にはピークに達することは間違いないことですので、このピークに到達する時期に合わせていかにその「質」も同時に高めることができるか?ということです。
子供のバランス能力とプレゴールデンエイジ
ゴールデンエイジ前の4~8歳ごろのことで、神経回路が80%まで形成され、急激な成長を迎える時期に該当します。
しかし、前述したように、スキャモンの発達曲線は身体各所の発達具合を重さ「量」で計測したものです。あくまで、運動能力は「質」で判断しないといけません。
ただし、スキャモンの発達曲線でもあるようにこの時期は、右肩上がりに急速に神経系が発達する時期です。「量」的な発育に合わせて、「質」的な刺激をたくさん入れてあげることで、運動能力の基礎がこの年代で築かれると言っても過言ではないかと思います。
この年代の子どもたちには、神経系により多くの刺激を与えるために、さまざまな動きを経験させながら、楽しくたくさん体を動かす機会を持つことが重要であると考えます。
子供の発育・発達とバランス能力について
このスキャモンの発達曲線をベースに子供の運動能力の話が進められています。インターネットで検索していただくとすぐにそう言った記事が出てくると思います。例えば、幼児体育の教室のホープページやスポーツスクール(特に多いのがサッカー)のホームページ、最近では学習塾のホームページなんかも出てきます。そのホームページで話の中に出てくるのが、「ゴールデンエイジ」であったり「プレゴールデンエイジ」という言葉です。
要約すると、「ゴールデンエイジ」や「プレゴールデンエイジ」と言われる年代は、身体の身体各所の組織の発育・発達が盛んに見られる時期であるため、その時期に合わせて身体や頭を使うことで、よりよい能力アップが期待できる時期であるので、この時期を逃さないようにしましょう。ということです。
子供の発育・発達とバランス能力について「私の考え」
この考えに関しては、私も大賛成です。
が、しかし私は別視点で2つのことを考えておかないといけないと思います。
子供の発育・発達とバランス能力について「昔遊びの重要性」
1つ目は、身体各所の組織の発育・発達が盛んな時期だから、どんどんスポーツスキルを教え込めば将来一流のアスリートになるんではないか?と子供の将来に期待して親心に勇み足を踏んでしまうということです。
この時期はあくまで成長の途中であり、今から身体が出来上がっていく時期になります。ということは、やるべきこと(子供に経験させるべきこと)は、さまざまな運動を取り入れ、身体にいろいろな動きを覚えさせることになると思います。簡単に一言で何をすればよいか?というと、私の答えは「コーディネーショントレーニング」であると思います。
「コーディネーショントレーニング」って言われても何をすればよいの?と思われる方も多いと思います。昔の記憶の中に、学校帰りどうやって帰っていたか?公園遊びをしていたころにどんな遊びをしていたか?思い出してみてください。
学校帰り、歩道の白線の上を落ちないように一生懸命歩いた記憶はありませんか?歩道の植え込みのブロックの上をバランスを取りながら歩いた記憶はありませんか?道路のコンクリートブロックの〇色だけしか踏んではいけないルールで下校したことありませんか?
校庭や公園遊び、雲梯(うんてい)で握り手を何本飛ばしてゴールできるか試したことはありませんか?登り棒で脚を使わずに手だけで登ったりしませんでしたか?誰が一番早く上まで到着するか競争したことはありませんか?ジャングルジムの中で鬼ごっこをしたりして、身体をいろんな方向にくねくねさせて逃げ回ったことはありませんか?ケンケンパーや大縄跳びなど競い合った頃はありませんか?
こういった、日常の遊びの中でさまざまな刺激が身体(動かす力)と脳(考える力)に入り、身体パフォーマンス(専門的運動スキル)を高めるための土台作りができるんです。
子供の発育・発達とバランス能力について「本当に重要なことは?」
2つ目は、この発育・発達が盛んな時期を逃すと能力が上がらないと思ってしまい、なんでもかんでも詰め込んでしまうことです。
確かにスキャモンの発達曲線の報告において、組織は表のように成長しますが、これはあくまで組織のサイズが成長するだけで、組織を使える能力が向上するわけではありません。組織の成長(サイズは)は「量」の問題で、それを使えるかどうかの能力は「質」の問題です。この両者の理解の混同には十分気を付けたほうが良いと私は思っています。
長くなりましたので、私の考えをまとめますと、この発育・発達が盛んな時期は、「できるようになること」を重要視するのではなく、「挑戦し続けること、経験すること」に重きを置いてサポートしていくのが良いのではないかというところです。
バランス能力、大丈夫ですか?子供のバランス能力向上のトレーニングについてのまとめ
今回の記事では、子供の発育・発達に合わせた能力習得の重要性についてバランス能力の話を織り交えて情報提供をさせていただきました。
大事なのは、習得させるということにゴールを置くのではなく、習得するに至るプロセスにおいていかに考えることをするか?プロセスを何通り持ち合わせているか?ということであると思っています。
普段の生活の遊びの中から、運動・スポーツの基礎動作は組み立てあげられています。
運動・スポーツの基礎は「走る・投げる・蹴る・跳ぶ」だと思います。
成長の基礎は「骨には刺激を」、「関節・筋肉には柔軟性を」だとLEAP Physio Lab.では考えています。発育・発達期のみならず、中学生・高校生の成長期においてケガやパフォーマンスの伸び悩みを感じているお子さんをお持ちの親御様、些細なことでも結構ですので、お気軽にご相談くださいませ!
今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。
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